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静閑とした公園で一頻り泣いて、目を充血させながら、道を歩く。
日も落ちていて、そろそろ帰らなきゃ死神優季クンのお迎えコースになってしまう。
「…駅まで送ってくれるなんて、ありがとうございます。優しくなりましたね、先輩」
隣を歩く彼は、やっぱりクール。
ツン、俗に言う無視をいただきました。
ご馳走さまッス。
「……………」
「…………………」
何を話すと言うわけもなく、とにかく歩くあたし達。
よくよく考えると、20分間くらい志貴先輩と話が続いた方が怖い。ホラーである。
志貴先輩と20分間話が続きました。なんて言った輩は、きっと20分間一人でマシンガントークをしているに違いない。
「志貴先輩、はるるんにごめんって謝っといて下さい」
「なんで、俺がしなきゃいけねぇんだよ」
「なんでも、いいじゃないですかー」
「じゃあ、やらねぇ」
「ケチーー」
「…………………」
はい、会話終了。
一般的コミュニケーション能力じゃクール怪獣シッキーンには、太刀打ちできたないのだ。
会話をすることを諦めて、彼の横顔を盗み見る。
彼の黒髪は、サラサラで。
羨ましいほどの睫毛の長さ。
中性的で、キメの整った肌。
暗くても分かるのだ。
どれほど、この人が魅力的な容姿を持っていているかくらい。
この人がどれほど中身が魅力的かくらい、分かる。
だから、
「あたし、志貴先輩に会えて嬉しかったです」
「……………気持ち悪」
「あはは。酷いなぁ」
ストレート過ぎませんかホント。
気付けば、もう駅で。
あたしは染々と思う。
「さようなら」
───お別れって、案外アッサリ。
ちりん、ちりん。鈴が鳴る。
まるで、願いを叶えきれなかったあたしを批判するようにさくらさんが泣いているように思えて。
あたしは強く桜のピアスを握った。