「冗談キツいよオニイサン」


「じゃあ、お金返してくれんの?」


「……はるるんさっすがーーっ‼太っ腹ダネ‼お腹、太ってるね‼」


「……………志貴。俺、この子を嫌いになりそうだよ」


なんつー発言。


そういうのは影でやりなさい。


「俺はすでに嫌い」


「わー傷付くー。でも先輩は照れ屋さんだから冗談だって分かるよ(はーと)」


「俺、ここまで鬱陶しい子初めて見た」


「俺もだ。こんなうぜぇの初めてだ」


「ちょっと!傷付くんだけど!ほんとに!あたしの心、豆腐並みなんですけど!」


「はぁ?そうだとしても、防弾チョキ着て、盾構えてんだろ」


「……………………」


あたしは一体何者だよ。


突撃隊か。


「…あ、はるるん」


「何ー?」


「ん、お金」


はるるんと志貴先輩があたしの悪口を言ってる間に財布から取り出した500円玉を握った拳をつき出す。


なんだかんだで、あたしは奢られるのはあまり好きじゃない。


どうでもいい人ならいいんだけど、もうはるるんはどうでもいい人じゃない。


なんか、借り作ってる気がするでしょ?


なんか、いつか恩返ししなきゃいけないみたいでしょう?


いつか。なんて曖昧な物はあまり作りたくない。


だから、今出来る形のある何かをしときたいのだ。


「えー。太っ腹とか言ってたんじゃーん」


「あたし、奢られるの嫌いなのー。ほれ、受けとれ」


渋々といった感じに彼はあたしの拳の下に手のひらを広げ、あたしは500円玉を彼の手のひらを落とす。


よし、これでミッション完了。