彼の背中の温かさ。彼の鼓動のスピード。彼の香り。彼の骨格。


「優季、好きーー」


「ハイハイ」


軽く受け流す彼の心拍数が一気に増えた気がするのは気のせいなのだろうか。


「美沙ちゃん、充電完了!優季充電器!さっさと行く!」


「お前が引き留めたんだろ」


「言い訳はいけませんッ」


「…………………」


優季はギロリあたしを睨んでから、足を進ませた。


あたしは急いで彼の隣に並んで、外に出る。



「ほら、志貴ー。美沙ちゃん、来たでしょー?志貴の負けねー。はい、スイーツ食べ放題券ちょうだいねー」


「…………チッ。」



ちょっと待てやコラ。


あたしが来るか来ないかで賭けしてませんでしたか‼?


「はるるんっ、賭けなんてしちゃいけませんっ!早くそのスイーツ食べ放題券をあたしに渡しなさいっ」


「美沙ちゃん思惑バレバレ。俺と一緒に行くなら、あげてもいーよー?」


「あ、はい。要らないっす」


「照れなくてもいいよ」


「照れてねーよクソが」


「美沙。口悪い」


「優季には言われなくないし」


「……………ま、頑張れ」


「言われなくても、そうするし」


「あっそ」


ぶっきらぼうに彼は言うが、優しく目を細めてくれたのをあたしは知っている。


「じゃーな」


「うん」


優季は、校門を目指して歩いていった。


さて、と。


あたしははるるんと志貴先輩へと向き直す。








「志貴先輩。はるるん。一緒に帰りましょっか」