だから、今から最終手段。
なんがなんでも、志貴先輩に桜のピアスを外させる。
彼の“藤崎さくら”への執着の塊はそれが元凶なのだから。
「優季。そういえば、あたしの家に置いてあった私物、持って帰った?」
「あーー。忘れてた」
廊下は静まり返っていた。
きっと、校長室で長話をしていたからに違いない。
あのオッサン。無駄に話長かったし。
お尻痛かった。
ソファーに座ってたけど、耐えれんよ校長先生。
「じゃあ、優季は今からあたしの家に行って私物の回収ってことで。あたしは昨日のうちに纏めてあるし、ついでに優季、持ってきといて」
「はいはい」
「あと、家具はそのまま置いてくんだけど、一応変なもの入ってないか一通り確認しといて」
「了解」
いつの間にか下駄箱に到着していて、外にはミルクティー色と黒色の髪がチラチラ。
ローファーを取り出して、地面に落とす。
落ちた衝撃で跳ねたローファーの片方がひっくり返った。
少しムッとなりながらも、ローファーを履いた。
「じゃあ、ここで暫しのお別れを」
「そうだな。じゃあ、頑張れよ」
「わっ」
クシャクシャと頭を撫でる彼。
あぁもう。髪の毛がぐちゃぐちゃじゃないか。
「優季ー」
「悪い悪い」
絶対思ってないよこの人!!
いつもいつも子供扱いしやがって。
「優季なんて、嫌いッ!じゃあ、バイバイっ」
「ガリ股になってるぞお前」
「余計なお世話!」
「じゃあな」
最後に、軽く頭を撫でて歩いていく彼。
一歩先を歩いていく彼の背中は、いつにもなく恋しい。
「優季、」
手を伸ばして、彼に触れる。
後ろから抱きつけば、彼はあたしを剥がすことなく溜め息をついた。
「ゆーうーきーー」
「んだよ」
「今、充電中なの。充電器は黙りなさい」
意味不明だし、と彼は呟いて、口を開かなくなった。