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「志貴先輩、サボりはいけないと思います」
あたしは桜の木の上で昼寝をしている彼に話しかける。
桜は、もう散り始めていて、もう少ししたら葉が青々としてくる。
桜の木が青々としてきたら何の季節?
そうともご名答だよ倉條サン。
毛虫大量発生の季節です。
世界中の女の子が憧れる軟らかいボディー。女の子を甘く見ちゃ痛い目見るよ、と言わんようなツンツンとした棘。
思い出しただけで、嫉妬心なんていう武者震いが起こって、気持ち悪くなる。
ヤツだけには会いたくない。
そのためにも、なんとしても先輩の木登りの趣味を止めさせなければ。
……………先輩が毛虫マンになってしまう。
人の心配をしているあたしはなんて優しい子だろうか。
ミス優しいガール。みんな、あたしをそう呼んでおくれ。
しかし、桜の木の上にいる彼は私の優しさは通じない。
「お前には関係ねぇ消えろ」
オコです。倉條サンはオコですよ!
いつものパターンにイライラと怒りを発生させるあたし。
もう飽きてきたよこのパターン。何回目だよこのパーティーン。
最低でもバリエーション増やして欲しいんですけど!
怒りがフツフツと沸いて今にも沸騰する勢いだが、その怒りを沈めようと最近覚えた英単語を頭の中でリピート。
gorilla 、gorilla 、gorilla ……。
アクセントはriの所で、舌を巻くようにして言う。
はい、もう一度っ!ゴーリラッ!
「リピートアフターミー?オーケー?」
「お前の頭の方がオーケーか?」
何で私が英単語をリピートしてるのを知ってるのっ!‼?
ハッ!
もしかして。
「先輩も発音の練習がしたくなったんですか!?」
「何故そうなった」
「いきますよー!はいっ、ゴーリラッ」