アパートの手前まで来て『ばいばい』と言おうとしたが、一向に別れる気がない彼らの様子を見て、部屋の前まで着いてくるということがわかった。
ほんっと、めんどくさい。
そう思うのだけれど、どこか胸が温かくなるのを感じた。
ピンポーン。と家のチャイムをならす。
鍵を持ってくのを忘れたのだよ。家主にあってはならないミスだ。
「じゃあ、ばいばい。はるるん、志貴先輩」
優季が扉を開ける前に、お別れ言葉を口に出した。
「うん。じゃあ」
「またな」
二人は笑顔で、お別れ言葉を言ってくれて。
あたしも、釣られて笑顔になる。
「じゃあ、また学校で」
だから、こんなことを口走る。
ガチャリ、と扉が開いた。
そこには、優季が呆れるような表情が浮かべていた。
彼に促されるように、マイホームに入ると、優季はドサリとソファーに座る。
これは、あたしも座るべき?
雰囲気を察知して、あたしもその二人掛けのソファーの優季の隣に座った。
「学校で、か。お前、色々矛盾してんぞ」
「あはは。そーだね」
「俺は出来るだけお前が思うようにする。けど、忘れんな」
「俺はお前の味方だ」