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「もう暗くなってきたし、帰ろー」


辺りはオレンジ色に染まっている。


公園で、志貴先輩と腹を探るような会話をしていたら、自販機でおしるこを買ってきたご様子のはるるんが帰ってきた。


もちろん、そのヘラヘラと幸せそうな顔がむかついて、そのおしるこを全部飲んでやった。


お陰で舌、火傷した。


「家、送っていった方がいいー?」


「あぁー。ううん。要らない」


駅周辺のカラオケやら本屋やら商店街で遊んでいたので、駅から数分歩く距離にあるマイホームまでは遠くない。


「お菓子につられて変なおじさんに着いていっちゃいそうで怖いわけよー。ここは、送らせて」


あたしは小学生か!


「100歩譲って、100万円くれなきゃ着いてかないし!」


「100万も、お前に価値はないだろ」


図星つく志貴先輩の一言に、美沙ちゃん船撃沈。


「…………む。…とにかく、要らない。そんなに心配なら、優季呼ぶ」


「なんで、橋本なんだよ」


「優季。あー見えても、すんごくお菓子作るの上手いの!お菓子を渡してくるおじさんに対抗しようって思って!あたしを拐うなら、これくらいのお菓子じゃなきゃってね!」


「対抗するところが違うだろうが」


「いでっ」


頭にチョップされる。


優しく細められた黒い瞳に、少し痛みに顔をしかめるあたしの顔が写り込む。


「志貴先輩は、じゃあどうやって変なおじさんに対抗するんですか!!」


「男が男に興味持つわけないだろ」


その意見は尤もだ。けれど、


「いえ。分かりませんよ?志貴先輩とはるるんのような、変わった趣味を持った人が…………痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」


「わり。手が滑った」


「手が滑って、グリグリ繰り出す人なんているわけないでしょ‼?」


「それより、橋本は無しだ。俺らが送るから黙って送られてろ」


軽やかスルー。あたしのつっこみはカスリもせずスルー。


うん。分かってたよ志貴先輩は、そーいう人だって。


「はいはい。分かりました」


渋々あたしは彼らの意見を受け入れた。