「お前、何でそんなに、晴を毛嫌いしてんだよ」
「………ん?」
毛嫌い?
「まさか」
毛嫌いなんてしてないよ。
「あたしは、はるるんは好きだよ。変態だけど、まぁいい人だし。けど、」
風が吹く。
グレーのシンプルなスウェットワンピにコートを着てニット帽を被って、淡い色のマフラーをしていたはずなのに、少し寒く感じられた。
風に撫でられて、吹き上げられた風は、やっぱり苛辣。
冬は好きだけど、同じくらい大嫌い。
お父さんはいなくなるは、お母さんに嫌われるは、散々な季節だ。
それと同じように。
「はるるんは、大好きだけど、嫌い。何考えてるか分からないもん」
分からない。それは恐怖でしかない。
もしバレたら、…なんて思ってしまう。
何重にも嘘を塗りたくって厚化粧をしているのに、一瞬にして、水で流されそうで怖い。
バレないという自信があるというのに、その自信が揺らいでしまうのが怖い。
「はるるんに、美沙ちゃんの秘密を聞いたときについでに言っといて」
自信がないから、あたしは虚勢を張るのだ。
「それは、ベストアンサー?って。」
気付いて欲しい?気付いて欲しくない?
そんなの決まってる。
───お願いだから。あたしに気付いて。