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「うぅっ……」
「美沙ちゃーん、泣かないのー」
「泣いてないし」
背中を擦ってくれるはるるんは、今は優しいお兄さんのようだった。
「だってだって。あのお姉さん、あたしの胸を見て、哀愁漂う視線を向けてきたよ‼?」
「きっと、お姉さんは現実主義なんだよ」
「はるるんの言葉で、もっと傷えぐられた」
「わーごめんって。ごめんって」
本屋さんを出たあたしたちは、どこに行きたいわけでもなくブラブラ歩いている。
……ということはなく、さっきの本屋さんでのカルチャーショックによって0にされたHPを回復しようと、近くの公園で休憩していた。
あたしとはるるんは、ベンチ。
志貴先輩は、ベンチ前のブランコに乗って、キコキコ漕いでいる。
その目は、キラキラしているのは気のせいだろうか。
クールクールクールと思っていた彼の印象がどんどん変わっていている今日この頃。
「どうやったら、大きくなるんだろ…」
「揉んであげよっかー?」
「触らないで変態キモい死ね。…あー、家に帰りたい」
「ダメダメー。橋本くんになんかに、美沙ちゃんはあげない」
ぎゅっと抱きついてきたので、あたしは彼の腕をつねってやった。
「いったー」
「離れてキモい」
「なんか、今日。美沙ちゃん、辛辣ー」
半分、あんたのせいだよ。自覚を持っていただきたい。