「ご用は何?」
「戻るぞ。明後日から学校が始まる」
「あー。もうそんな時期なんだね。了解。荷物、まとめる」
「あぁ。30分後に出発だ」
「了解」
用件だけ伝えると、部屋を出ていった彼。
彼は今からどこへ行くのやら。
「ふぅー」
大きな息を吐いて、気合い入れ。
あたしは、ボストンバッグに物を詰め始めた。
優季が帰ってきたのは、ちょうど30分後。
「行くぞ」
「了解ー」
大きなボストンバッグをナチュラルにあたしの手元から持っていった彼は、先を歩く。
そんな些細な優しさに、彼の背中を見るあたしの目ともは垂れ下がる。
「優季待って」
「歩くの早かったか?ごめん」
「や、別に。スタートに出遅れた的な」
意味不明だ。……明後日、確認テストだから勉強したいんだよ」
「そっか。ごめんね。こんなときに」
「別に」
建物の前に停まるタクシーに乗り、家へ向かう。
車窓から流れる景色は、とても懐かしい。
あと、この景色をどれだけ見られるのだろうか。
終わりを探そうとしてしまうのは、あたしの悪い癖。
考えないように、外を見るのをやめた。
「着きました」
タクシーに揺られ10分弱、着いたあたしの家であるマンションに到着。