そんな俺の答えに小さい舌打ちをした彼は飴色の瞳を燃やしている。
「……ゆう、き」
不安な彼女の声が漏れた。
「大丈夫だ。俺は、お前の味方だから」
彼女を髪を撫でる彼。
その様子に黒い感情が蠢く。
橋本優季の手に少しすり寄っているような彼女。
また黒い感情が蠢いた。
「……アサギリ先輩と、ツキクラ先輩」
「なーんだい?後輩クン?」
「美沙に付きまとうな。ストーカーは止めろ」
バッサリ言う彼の瞳は真っ直ぐに向いている。
遠慮という日本人の心得がない彼の棘だらけの言葉は、ストレート。
なんか、アレだな。
一人の女を取り合って、男が喧嘩する的な。
青春の代名詞。修羅場っつーやつじゃねぇか。
「ストーカーとか気持ち悪いんだよ。通学路で待ち伏せとか、勝手に帰り道に同行してきたり、今みたいに放課後の勉強に乱入してきたり」
橋本優季は、ヘドを吐くようにツラツラと俺らの行いを言う。
しかし、彼は大切な事に忘れてる。
「橋本クン、ちょっと被害を言うのを止めよっか」
「は?フザケンナ」
「ふざけてんのは、そっち。美沙ちゃんを見てあげて」
晴の言われるままに、彼女を見た橋本優季。
彼の怒りは、一気に沈下。
「うぅ、……あたしは、気持ち悪いよーだ。でも、そこまで言うことないじゃん。ちょっとはね、了承を得てるんだからね」
春にストーカーをしていた彼女。
俺らへの悪口は、彼女の悪口にもなるわけで。
思いっきり流れ弾。
「優季なんて、嫌い」
「悪かったって」
しゃがんで、顔を手で覆いシクシクしている彼女に、橋本優季は何度も謝る。