ガラリ。教室の扉が空いた。
「美沙、待たして悪かったな。かえ、…………」
扉を開けた人は、途中で喋るのを止めた。
「……美沙チャン?どーいうことかな?」
扉を開けた人は優しい口調で、彼女に問う。
ただし、目元は笑っていない。
彼女は、思いがけない彼の登場に怯んで、うぅっと謎の呻き声を上げた。
「やだなー橋本クン。そんか怖い顔しないで(はーと)」
晴の言葉にこめかみをピクつかせた橋本優季。
「や、そのね!?違うの!ほんっとに!」
アイツは謎の弁解をし始める。
「あれなの!ほんとに!マジで!カクカクシカジカ的な!ね!?分かった!?あたしは悪くないでしょ!?」
「カクカクシカジカじゃ分かるわけないだろ」
「やだなぁ相棒。冗談キツいゼ」
「誰が相棒だコラ」
ナチュラルに橋本優季の肩に置いた彼女の手は見事に払われた。
「アサギリ先輩と、ツキクラ先輩?まだ美沙のストーカーしてんだよ」
飴色の彼の目は、鋭利で俺らを睨む。
「だって、好きだもーん」
それに怯むことなく、晴は答えた。
「…………………」
ただ俺はその様子を見てるだけ。
「…………ツキクラ先輩は?どうなんだよ」
飴色の瞳が俺を捉える。
俺と橋本優季の間にいるアイツは、あたふたあたふた。
そんな可愛いリアクションをしている彼女を横目に見ながら、
「……………さぁ?どーだろうな」
曖昧な答えを弾き出す。