最後に会ったとき、言われた彼女の言葉。
あの時のさくらの表情が忘れられない。
心臓が押し潰されるみたいに胸が痛かった。
「志貴先輩、ピアス弄って何してるんですか?手、止まってますよ?」
我に返り、現実に戻った。
「あぁ、……」
無意識にピアスを弄っていた右手にペンを持たせた。
「…………………」
次の恋をする事が、さくらの願い。
聞かされたとき、
ふざけんなって。誰が忘れてたまるかって。
思った。
拳に力を入れすぎて、手のひらを爪で傷付けたのを覚えている。
今でも、それはその気持ちは変わらない。
だから、今のこの気持ちも忘れなければいけない。
認めるなんて論外。
でも、晴は気付いているんだろうな。
だから、こんなに必死なんだろ?
「………………」
もう懲り懲りだ。
こんな気持ち。
苦しいし、辛いし、苛立つし。
一番嫌なのは、晴と取り合うこと。
折角の親友の初恋。叶って欲しい。
失恋して、前以上に女遊びが派手になられると、もう手のつけようがない。
だから、この気持ちは知らないふり。
気付いていても、知らないふり。
分かっていても、知らないふり。
だって。そうすれば。
「美沙ちゃーーん、何でそんなに可愛いのー」
「はるるんは、何でそんなに気持ち悪いの?塩撒けば、ドロンしてくれる?」
「ドローン?あの無人飛行機?あぁ分かった。あれ、よく落下する事件が多いから、あのドローンのように、何度も俺のハートをゲットします、ってこと?」
「………………」
「美沙ちゃんなら、大歓迎!もう塩いっぱい撒いて!」
「………………………」
この楽しい会話も、楽しい晴の顔も。
途切れることはないのだから。