「美沙ちゃんが、俺らと近づく理由がどうとあれ。どんな下心があったとしても」
ちょいとそこ。少し卑猥に聞こえるよ。
もちろん、そんなことはこの空気で言わないけど。
「美沙ちゃんと一緒にいたい」
「……………あっそ。好きにしたら?」
「うん、好きにさせてもらうよーん」
「………………」
言い返せなかった。
そうじゃなくて、言い返さなかったのかもしれない。
「倉條と朝霧じゃねぇか。SHR始まんぞ。教室に戻れ」
なんとも言えない空気に天の声。ただし、その声は悪魔の声。
「センセ…」
「ミユッキーじゃーん」
み、ミユッキー??
「ぷっ、……………あはははっ!ミユッキーねミユッキー!!マジ、受けちゃうんだけどっ!!」
カナちゃん改めミユッキーでじゃん。
「朝霧、俺は御幸先生だ。次それで呼んだら、殴るぞ」
「わー教師とは思えない暴力発言ー教育委員会に訴えよー」
はるるんを横目に見た彼の視点の焦点はあたし。
か、ん、しゃ、し、ろ、よ、な。
口パクで、ニヒルな笑みを浮かべた。
もちろん、あたしはスルーを決めて、はるるんに目を向けた。
「先生に見つかったんだし、お開きにしよっかアサギリ先輩。」
「そうだね美沙ちゃん」
案外あっさりと第二会議室を彼は出ていった。
この場に残ったあたしとセンセ。
「お迎えですか?随分と優しいんですねカナちゃん」
「あまりにも遅くてな、迎えに来てやったんだよ。感謝しろガキ」
「うっさいオッサンのくせに」
入り口の扉にもたれ掛かる白衣の男。
キッと彼を睨んだ。