「……………何が言いたいの」
怪訝な視線を彼にぶつける。
「……俺、やだ」
「何が」
「美沙ちゃんが、いなくなるの、やだ」
「…………………何でそうなるの?」
「だって、俺。美沙ちゃんが好きだしー」
ニコニコと甘い笑みを浮かべながら、当たり前のように言う。
『本当の美沙ちゃんは、“ ”なんじゃないの?』
文化祭で言われたあの言葉が耳元で聞こえたような気がした。
鼓膜が震えたような気がした。
「美沙ちゃん、ガード固すぎ」
こつん、とあたしの肩に頭を乗せる彼。
ミルクティーの髪が、顔に当たってくすぐったい。
「文化祭から、もう1ヶ月と2週間。ずっと話しかけようとしてるのに、美沙ちゃん、絶対見つけたら誰かといるし」
やたらと橋本優季といるの多いし、と少し不満そうに付け足す。
「……なんで、そんなに話しかけようとしてるの」
少し、冷や汗を握った。
「美沙ちゃんに会いたくて、クラスとか行ったりとか、下駄箱で待ち伏せとかしてるのって、さすがにやってない。美沙ちゃんも、俺らに会いたくないんだろうし。だから、見かけたら絶対話しかけるって決めてた」
その結果が、これ、ね。
ほんと、運がない。
運気あげたいなぁ。おまじないとかやっちゃおっかな。