ただ“普通”に戻っただけ。
これまでが、少し“異常“だっただけ。
けど、なんでだろう。
絵の具の鮮やかな赤、一色に塗りつぶされた空、チカチカ点灯する赤黄色緑、踏み切りの黄色と黒。
全て色褪せてみてる。
別れを切り出したのは、あたしで。
全て出会いも別れも計算し尽くしていたのも、あたし。
何のとりとめのない懐かしい会話が時折、頭に流れる。
ちりん、と鳴った綺麗な音。
あの人から、さくらさんから貰ったお守りの鈴。
道しるべで真っ直ぐな音だった鈴が、迷っているような曖昧な音になったような。
同じ音なのに、違う音のように聞こえた。
「…戻りたい、……」
乾いた風が、空を切り裂く。
言葉もそれと一緒に。
切り裂かれてバラバラバラバラ。
乾いた空気に溶けていった。