地上に着いたときには、はぁはぁはぁと息が上がって。
数メートル先の優季を発見。
少し早歩きぎみである。
息を整えたあたしは、キッと彼を睨んだ。
許さない!美沙ちゃんを置いてった罪は深し!
「トルネードボンバーっ」
「…黙れ勉強中だ」
彼の手には、一昨日ほど前に配られた数学の問題プリント。
「………………」
うぅ、……。
どうしようマジで優季クンが冷たいんですけど。
「勉強なんかやめちまえ」
「なら1位譲れ」
「無理」
「俺も無理」
「……………………」
ちろり、優季の数学プリントを見る。
「見るな勉強するな点数上げんな」
「ちょ、……別にいいじゃん…っ!見るくらい」
肘でグイグイと顔を押される。
「ちょっ、顔が変形したらどうしてくれんの」
「どうもしない。だから見るな」
冷た!ほんと冷た!
優季クン、君は冷えピタか!
「…別にいいしー。古典の助動詞確認しよーっと」
諦めたあたしは、違うことをやりだした。
歩きながらスタディー。
お察しの通りテスト当日の光景である。
北府高校最寄り駅を降りると、溢れかえる参考書参考書参考書。
至るところ参考書だらけだ。
「…………ううーーー、」
「唸るなキモイ」
「優季クンほんと冷たい」
この隣の男は、きっと徹夜しているに違いない。
八つ当たりが半端ない。てゆーか、冷たい。