「美沙ちゃん。これから少し時間ある?」


さくらさんの急な誘い。


あたしもさくらさんと話したいけど。



(優季、大丈夫かな。)



(優季はこんな大切な日に大風邪を引いてしまった)


(なので、優季の合格通知表の受け取りを無理矢理あたしが引き受けた。)


(一応、優季にも合格したこと知らせたいし……。)



時計を見ると長い針が3をさして用事の時間が迫っていた。


(少し早めにこれを切り上げてもらおう。)


「あたし、30分から用事なんですよ。15分でよければ…………」


「15分もあれば大丈夫よ」


「そうですか。よかったです。話って何ですか?」


初対面なのにそんな改まってするような話ってどんなのだろうか。


どきどきどき。


こんな経験をしたことないあたしは、心臓を鳴らしていた。



「ねぇ北府高に入るのよね?」



確認するように聞く彼女。



「はい、そうですよ」



そう答えると、意志を固めたように彼女は拳を固めていた。


(また罪悪感。)


彼女の黒の瞳を見ると、強い意志をした揺いでいなかった。


けど、そんな瞳なのに一瞬だけど。


悲しげに揺れたのは気のせいなのだろうか。


「ねぇ美沙ちゃん。約束をしない?」


「約束、ですか………?」


「うん」


どんな内容なんだろうか。


けど、不思議と、





「…………いいですよ。あたしでよかったのなら」





彼女の約束を守りたいと思ってしまう。


「美沙ちゃん、ありがと。あのね、」


「はい。何でしょうか?」















嘘をついてごめんない。


それくらい彼女と話したかったの。


あの日、見上げた蕾の桜の木の上で、泣いている彼を見たあの日から。


泣いてまで想う彼の想い人は、どんな人なのだろうか。


そんな好奇心があたしの背中を押し、嘘をつかせた。


そんな軽い気持ちで彼女に嘘をついた罰に。


彼女に、諦めていたことを諦めてはいけないことを気づかさしてくれた感謝を。






そんな気持ちで、あたしはカラフル世界に飛び出した。