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「ねぇ、北府高校に入学するの?」
3月の終わり。
あたしは、さらさらと靡く綺麗な黒色の髪をした儚げな彼女に出会った。
真っ白い透けているような美しい肌。ぱっちりとした二重瞼。可愛らしい小さな唇。
とても、綺麗な人だった。
あたしは、彼女に見とれていた。
その魅力は見た目だけではなくて。
今にも消えていきそうな儚さがあって、縁起が悪いけれども、その儚さも美しく見えたのだ。
(その日は合格発表日で、手には合格者に配られる書類が入っている封筒を、あたしは持っていた。)
(きっと、彼女はそれを見て、あたしが北府高校へ入学する人だと勘違いをしたのだろう。)
「はい。そうですよ。あたしは北府高校に入学する者です」
(少し罪悪感を感じながら、あたしは嘘の返事をした。)
そう答えると彼女は花を咲かしたようにぱぁっと笑う。
まるで、向日葵のような笑顔だった。
「よかったぁっ」
弾む彼女の声。
美人の声は美人なんだな。
…とワケの分からないことを頭の片隅で考えた。
「ねぇ名前何て言うの?私はね藤嶋さくら」
「あたしは倉條美沙です。さくらさん」
「よろしくね、美沙ちゃん」
意外と彼女は気さくな人で、初対面なのにとても仲のいい友達のような、そんな錯覚を覚えた。
「さくらさんは何歳なんですか?」
「16歳だよ。美沙ちゃんより一歳上かな~」
1個上だけなんだ。
彼女の雰囲気も仕草も、全てが大人みたいで、とても意外だった。