「志貴先輩、好きです。付き合ってください」
その言葉を言い終わると、花火が上がる。
バンッバン、バンッバン。
大きなその音は激しく鼓膜を揺する。
「俺は、」
「志貴遅いー」
志貴先輩の隣にある階段から聞こえる彼の声。
甘く緩い彼の口調は、懐かしい。
待ちきれなかったのであろう彼は2階から1階に降りてきてくれたようだ。
タイミング悪いなぁ、ほんと。
こんなシナリオはないのに。
カツカツカツ、と彼が軽やかに階段を降りてくる音が聞こえる。
「志貴先輩、返事、ください」
早く返事をして。
そう急かしたけど、手遅れで。
「志貴、何見てんのー?花火と逆方向だしーー」
彼の視界にあたしが入った途端、表情が変わる。
「み、さちゃん…?」
「晴、」
その不安に揺れる彼の瞳を見た志貴先輩は、また瞳を揺らす。
「志貴先輩、」
あたしが呼ぶと、彼は我に返ったようにはるるんからあたしへと視線を戻した。
彼の口は、ゆっくり開いて。
言葉を紡ぐ。
「…俺は、お前が好きじゃない。お前とは、付き合えねぇ」