「行くのは、いいけれど。この格好で行くの?」
シンデレラは自分の服をつまんだ。
質素で、とても汚い服である。
「安心しろ。そこは俺が何とかしてやる」
「アラブカタブラって唱えるの?それともビビデバビデブー?あ、もしかして!エクスペクト・パトローナム‼? ウィンガーディアム・レヴィオーサ‼?」
「……死ね」
その言葉とともに彼の杖は降り下ろされる。
(殺される……っ)
シンデレラは強く目をつむった。
が、腹がちぎれるような痛さも、灼熱地獄のような暑さも感じません。
シンデレラは恐る恐る目を開いた。
「わぁっ、……」
シンデレラは、綺麗な衣装に身をくるんでいた。
髪の毛も綺麗にアレンジさせていた。
「別人みたい……」
「おい、あと5分で始まる。急ぐぞ」
自分の変わりように感嘆するシンデレラをよそに、魔法使いはシンデレラのベットの脇にあった石灰の袋に向かって、また杖を一振り。
「え、……」
なんとなんと石灰の袋は本のような大きさのミニチュア馬車になりました。
「おい、行くぞ」
乱雑にシンデレラの手を掴む魔法使い。
魔法使いは窓に向かって、走りだし飛び出した。
シンデレラの部屋は2階。
(もしかして…自殺に巻き込まれたの‼?)
シンデレラは宙に落ちながら、そんなことを思った。
シンデレラの右手を繋ぐ魔法使いは、余裕な笑みを浮かべ、さっき作った石灰ミニチュア馬車を優しく息を吹き掛けた。
そのミニチュア馬車は、綺麗な光を放って、どんどん大きくなっていく。
(そんなのどうでもいいから!あたし、地面とごっつんこしちゃうんですけど!)
シンデレラの頭に走馬灯が流れ出す。
「…おばあちゃん。あたし、今からそちらの世界に行きます。みかんとお年玉、ちゃんと用意しておいてね」
シンデレラはゆっくり目を閉じた。