はるるん、正気に戻ってください。
美沙ちゃんは、切実にそう願っております。
たとえ、あたしがそう願っても、それが心の中でのアクションなら彼には伝わらない。
あぁ悲しき。
「………………ッ」
いつまで、この体制を続けるのだろうか。
恥ずかしすぎて、じわりじわり涙が出てくる。
はるるんなんか相手に泣くとか、絶対ヤだ!
最後の抵抗に、と彼を睨んだら。
「……………え、」
彼は顔を真っ赤に染め上げた。
デ、デジャウ…………。
彼はあたしがガン見しているのが、また恥ずかしく感じたようで、あたしの顎を掴んだ手で、自分の顔を包んだ。
あっさり、羞恥プレイから解放された。
なんか、嬉しいような悲しいような。
あ、うそ。
悲しいなんて、思ってないからね。
あたし、アッチ系の趣味ないからね。
新しい境地を開いた、なんて思わないでね。
「はるるーん、生きてまーすかー」
パチパチパチとフリーズはるるんのほっぺを軽く往復ビンタ。
さっきのお返しも兼ねて、数回力を入れてやったことは秘密にしていただきたい。
少し正気に戻ったはるるんは、あたしの顔を見るなりしかめて、志貴先輩の方へ行っていく。
「志貴ー。俺、美沙ちゃんやだー」
「俺もいやだ」
「もう、なんていくかさ、急にあーゆーことしてくるし、計算なのかと思いきや自然とだしー。もう美沙ちゃんが怖いっ。涙目で睨んでくるとか、もうあれモンスターだよー」
聞き捨てなんねぇなオイ!
涙目で睨んでくるとかー、て所まで、あたしの色気にやられたかと思ってたのに!
モンスターだー、って言われた時点で、コイツらあたしを、バカにしているという確信が出てきた。
「表に出やがれッ」
これで、ケリ着けようじゃないの。
「志貴ー。俺、あのモンスターに勝てる自信ないー。志貴が出てあげてちょうだい」
「ふざけんな。お前が出ろ」
なんの譲り合いだコラ。
言葉という矢が美沙ちゃんハートを容赦なくぶっ刺していってるんですけど!