「…倉條さん、と優季くん…………きゃー、…っと我慢我慢。倉條さん、後ろ向いてくれるかな」
「うん」
もうつっこむまい。
クルリと回れ右をすると、スカートがひらりと舞う。
なんか、文化祭でいろんなの人の意外な一面を見た気がする。
文化祭委員長は、意外と押しが強い。
山川さんは、美人なのに頭のネジが一本外れている。
ヤクザ面の鬼瀬先輩は、意外と小心者。
草食系の肌白の小林先輩は、ガッツきモンスター。
小林先輩率いる3年4組のお姉様方は、異様に優しい。毎日、キャラメルをくれた。
そんな人たちとの文化祭。そんな人たちとの思い出。
「………山川さん、文化祭楽しみだね」
「うん。私も楽しみ。…倉條さんのメイド服が」
うん。やっぱり、この子は期待を裏切らない子である。
「俺も楽しみだね」
机に座る彼は王子様なスマイルをあたしに向けてきた。
「あたしは、優季が女の子に追われるのを見るのが楽しみだよ」
ニッコリ笑みを彼に向けて答えてやると。
「…………………」
無言でぷいっとそっぽを向いた。
「……そういえば、シフトとか見てない」
「倉條さんは午前中すべてお店で店員さんだよ」
「へぇー、って何で午前固めてあるの?」
「橋本くんがそうしてほしいって……あれ?違った?」
……………。
午後は先輩たちと回れってか。
まぁ優しい気遣いと受け取ってあげよう。
「うん、そうだった。ありがと」
「いえいえ。…あ、けど。倉條さんは文化祭回ってる間、宣伝としてプラカードだけは持っててね」
彼女の目線の先には可愛くかかれたコスプレ喫茶とその詳細がかかれた文字。
「それくらいなら、大丈夫大丈夫。了解」
山川さんはあたしの答えに満足したのか、綺麗に笑った。
やっぱり、この子は美人だ。
とまた再確認。