スッと彼の唇から手を離すと、彼は名残惜しそうに目を細めた。
「美沙、」
「何?」
「ちゃんと、自分のことも考えろ。あとお前は自分のことを過小評価し過ぎだから」
「……え?あたし、賢いとか思いっきり言ってんだけど。これ以上に言ったらさすがに嫌われるんですけど。嫌われろ、と?」
やだやだヒドーイ。
「そういう意味じゃない。分かれバカ」
「バカじゃないし」
「分かった分かった。なら、手出せ」
「え、何する気」
「いいから出せ」
何その剣幕。すんごい怖いんですけど‼?
今からあたしを殺るみたいな剣幕なんですけど‼?
優季はよっこらせ、という爺臭い掛け声と共に立ち上がり、あたしを見下ろす。
「…ほら、手出せ」
「…………ん」
彼の剣幕押されて、ゆっくり恐る恐る手を差し出す。
優季はあたしの手を包み上に引っ張って、立ち上がらされる。
彼の行動は意外なことで、彼の力を入れるままに体が動く。
持ち上げられたあたしの手は、次に奥に引っ張られ、ぐらりと体はよろめく。
ポスッ、とゆっくりと彼の胸に頭がつっこんだ。
彼の胸板とあたしの頭がごっつんこ。
案外痛い……っ!!
少し涙目になって、隠すように顔をうずくめると、優季の腕はあたしの体を優しく包んだ。
「ちょ、…何してんの優季」
はたからみたら、朝っぱらから抱き合っているラブラブバカップルだ。
「煩い。…お前、一人で抱え込むなよ」
「………………」
「…俺は、絶対お前の味方。それを忘れんな」
「………………」
よくこっ恥ずかしいことを、こっ恥ずかしい体制で言えるもんだ。
でも、この体制が嫌いなわけでも、その言葉が嫌いなわけでもなくて、感じるのは心地よさ。
どくん、どくん。
どくん、どくん。
あたしと彼のパルスプルス心音がリンクする。