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文化祭当日。
「さ、…美沙、…………美沙」
「ん、あ、………ゆう、き」
「採寸の確認をしたいんだってよ。隣の教室に行けって」
「うん」
メイド服をずっと渋っていたので、服の採寸などをしていなくて文化祭当日の早朝にしていた。
朝早く学校に来たせいかとても眠い。
眠すぎて、いつのまにか机に突っ伏して寝てしまっていた。
「あ、うん。分かった」
ガタン、とイスを音立てて、席をたつ。
「いだっ」
立ち際に小指を机の角に強打して、よろけた。
座っていたイスに着地すれば、お尻はセーフ。
そう思って、イスめがけて尻餅ついたが、大外れ。
床とお尻がキッスして、お尻に何とも言えない痛みが走る。
「…ドジ。どんくっさ」
クスッとふんわり笑う優季。
いつもこうやって笑えばいいのに。
王子やらなんか知らない作り笑顔なんかより、断然いい。
年相応っていうか、なんていうか。
いつもの優季は大人ぶって優雅に笑う。
大きな病院である橋本病院の一人息子なんだから、仕方ないと分かっているけれど。
あたしはさっきのように笑ってほしい。
「うるさいなぁー」
久しぶりに優季の笑みが見れたあたしは地味に嬉しくて、ニヤケ気味。
はたから見れば、変人に違いない。
「何笑ってんだよ」
差し出された彼の右手。
あたしは笑いながら、その手を掴もうとした。
けれど、現実はそう甘くないらしい。
「あ、………………」
あたしの手は宙を切って、空気を掴む。