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あたしの隣の部屋には、優しいお婆さんがいた。
………と言っても、数年前に亡くなってしまったけれど。
そのお婆さんは色んな話をしてくれて、あたしはとても大好きだった。
「リンドウって、知っているかい?」
シワがたくさん刻まれている手は、あたしの髪を撫でてくれた。
「何それ。果物?」
「違うよお嬢ちゃん。リンドウって言うのは、9月から11月。秋に咲く花さ」
「へぇー、お婆ちゃんって、お花が好きなの?」
「ちょぴっと好きだね。今度、一緒にお花屋さんにでも行くかい?」
「気が向いたらね。…それより、リンドウ!!お婆ちゃんリンドウ!」
「私しゃあ、リンドウじゃないよ。…リンドウっていうのは、秋に咲く花じゃよ」
「それ、さっきも言ったよー」
「それは失礼。リンドウってのは、青い綺麗な花でな、私はそれが一番好きでな。私の初恋の人が初めて私にくれた花なんだよ」
「へぇー。お婆ちゃんの初恋の人って誰‼?時々一緒にいるお爺ちゃん‼?」
「違うよ。お爺さんは2番目に好きになった人じゃ」
「じゃあ、初恋の人は?」
「死んだよ。私に花を渡してくれた翌日に」
「………………え」
「リンドウの花言葉は知ってるかいお嬢ちゃん。」
「知らない」
「なら、教えてやろう。
リンドウの花言葉は、
───“さびしい愛情”だよ」