──『橋本くんっ!!倉條さんにっ、どうしてもメイド服を着せたいの……っ!もし、説得してくれたら、次の席替えで倉條さんの隣の席にするから!!お願い!!』
俺の次の席も関わっていることだし。
俺は果すだけ。
「……クラスのヤツがな、本当は美沙ちゃんは私たちのことが嫌いなのかな…って。断り続けるもんだから、勘違いしてる」
「…うっ」
「お前が着ない限り、クラスのヤツはお前に嫌われると思って悲しんでる」
「…………うっ」
本当は、嫌われるなんて可愛いことは思っていなくて。
どのポーズで彼女を撮れば一番可愛くと撮れるかの会議を午後にしていたなんて、言うまい。
「美沙、お前って薄情な奴だな」
最後の押しの一言。
「わかったよ!!着る着ます着させていただきます!!」
やけくそに叫ぶ彼女。
次の席替えの美沙の隣はゲットだ。
「……じゃ、伝えてくる」
言いいい残し、リビングを出る。
リビングを出る際に見た時計は20時45分をさしていて。
電話をしに、外に出ると真っ暗な夜だった。
衣装班のヤツに電話をかける。
衣装班は泊まりで、服の仕上げをするらしい。
─『もしもし、橋本‼?』
「忙しい?相川」
─『まぁまぁ。あと二人分って感じ』
「そっか。頑張れな。…それより、文化祭委員長の牧野さんいるか?」
─『あぁ』
牧野さんこそ、美沙に毎日メイド服を着てくれと頼み込んでいたヤツである。
まさかあそこまで粘り強い人だとは思っていなかった。
人は見た目によらないものである。
─『電話変わりました。牧野です』
「あぁ、牧野さん。美沙、メイド服を着てくれるって。良かったね」
自然と口調が変わった。
美沙曰く『王子さま口調』である。
─『ほんと‼?ありがとう、橋本くん。倉條さんに明日、7時00分に来れるか聞ける?』
「うん。多分、オッケーだと思うよ。伝えとくよ」
─『ありがとう!じゃあ、私、忙しいからもう切るね』
「うん、頑張って。またね」