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side.Y


「…………おい、ご飯粒頬っぺたに付いてる」


「オシャレだし。優季、時代遅れー」


イラッ。


「……………」


「……いだっ、ご飯粒潰れちゃうっ!あぁ!あたしのオシャレが…っ」


ぐりぐり、と彼女の頬っぺたを親指で押す。


もちろん、ご飯粒はついていない方の頬っぺたを。


ご飯粒を潰すなど言語道断。俺の手が汚れる。


「ギブッ!ご飯粒ちゃんと取るから!」


「……ん」


ここは潔く身を引く。


彼女は手で雑に頬っぺたを触りながら、ご飯粒を探す。


「……バーカ。こっちだ」


「…んっ」


彼女の手と反対側の頬に手を伸ばして、親指でご飯粒を取った。


「優季ママー、ありがとー」


「殴られたいのか」


「いえ、滅相もないッス」


そういえば。


クラスのヤツがコイツにメイド服を着させるようにしてください、と90度になるまで頭を下げてきたんだった。


コイツは文化祭前日まで、嫌だ嫌だと言い続けたらしい。


珍しくめんどくさがらずに断り続けたものだ。



「…なぁ、美沙」


「何?」


「メイド服、着ないのか?」


「嫌だよ」


「何で」


「似合わないじゃん」


お前ほど似合うヤツはいないだろ、とつっこみを入れたくなる。


美沙がメイド服をきて、何かしてくれるだけでクラスの優勝確率はグッと上がる。


みんな、それを期待しているのだ。