手を合わせて。
「「いただきます」」
その言葉を合図にご飯を食べ始める。
「最近、テストあったわよね?どうだった?」
「いつも通りだったよ」
「学校はどうだった?」
「いつも通り。愛ちゃんと一緒にいる」
「そう。良かったわ」
「お母さんは心配症だよ。私、もう中学生なんだから」
「けどね?子供は一人だから。心配するのは仕方ないでしょう?」
ドキンドキン。
心が不調和音を立てだす。
子供は一人コドモハヒトリ。
嘘は言わないでよ。私は忘れてないよ?お姉ちゃんのこと。
大好きなお姉ちゃん。綺麗なお姉ちゃん。自慢なお姉ちゃん。
私は忘れなくない。
「……………」
お母さんの言葉に返事できず、食卓は重い空気に包まれていく。
お母さんの表情がどんどん歪んでいく。
あぁなんで。
嘘でもなんでも、言えばいいのに。
どうせ、最後には頷くのだから。
「私の子どもは、あなただけ」
壊れた人形のように、いつもの言葉を繰り返す。
「…………………」
彼女は、また顔を歪める。
「私の子どもは、あなただけ」
「………………」
「ねぇ、そうでしょう?瑠菜」
「……………」
返事はせず、“いつも通りに”首を縦に振った。
彼女は瑠菜瑠菜瑠菜、と私の名前を幸せそうに呼び出す。
「なぁに?お母さん」
「あなただけが、私の子ども」
「………………」
肯定も出来ずに。
ふんわり、目の前の女に笑みを返す。
すると、目の前の女は満足げに目を細めた。
あぁ、やっぱり。
私のお母さんは、どこか。
────狂気に溢れている。