『女は度胸。男は愛嬌の時代だよ!レッツ度胸☆』





少し、というかとても可笑しな言葉だけど、これは私の魔法の呪文。


ちちんぷいぷいのぷい、みたいなそんな魔法の呪文。


私のお姉ちゃんが教えてくれた魔法の呪文。



「女は度胸。男は愛嬌の時代!レッツ度胸☆」



うんっ。勇気出てきた…っ!優季くんだけに。


うん。ギャグセンスもなかなかだよ、私。


「よしっ」


鼻息を荒くして、私はかじりつくように返信文面を見る。


「あ、…………」


優しい彼の優しさに、ふっと笑みが溢れた。


彼はいつも、そうだ。


いつも隙なしのパーフェクトマン。


紳士的な笑みを浮かべるけど、それは分厚い彼の仮面。


けれど、その仮面は特定の人には外される。


そして、彼はいつも、特定の人には優しくて。


彼の作るお菓子のように糖分高め。


甘く甘く、これ程かと言うほど甘く。


甘過ぎて、私は時々それが欲しくなる。


けれど、その甘さは私のものではない。


私には、彼の優しさは向かっていない。


違う人へ向ける彼の優しさが、おこぼれで私に向かっているだけ。



「ご飯できたわよー」



一階いるお母さんの声が聞こえた。


時間はもう9時前で夕食の時間だ。


お母さんは、バリバリのキャリアウーマン。


いわゆるデキル女っていうやつだ。


そのお陰で、お母さんは一人で私を育てるお金を作ってくれる。


だから、少し遅めのご飯だって、嫌いじゃない。


お母さんは、私の憧れ。


一階に行くと、お母さんはもう机に座っていた。


私も急いで、自分の席についた。


「ご飯、食べましょっか」


「うん」