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「…………………」
じーーーーー。
「………………………」
じーーーーーーーーー。
「煩い」
「何も喋ってないんですけど」
「視線が煩い」
「それ、照れ隠しですか?」
「……………………」
無視された無視されちゃった。
「…何か大切なこと、忘れてる気がするんですよね」
そう呟くと、目の前の彼は少し顔をしかめた。
──『美沙っ、!?』
「あ、…………」
はるるんと謎の人Aの登場で、消されてしまったあの言葉。
必死にあたしの名前を呼んでくれたあの時間。
名前で呼んでくれたのに、あたしは撮影を邪魔したことで、頭がいっぱいで隅に追いやっていた。
「志貴先輩」
「…………………」
「…また、名前で呼んでくださいね?」
チッ、と舌打ちをした彼は、顔をそむけた。
「録音したかったなぁ」
「……………」
「もう一回言ってくれませんか?録音します」
「………………」
無視ですね、うん。マジでクール。
さすが志貴先輩である。