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「だ、台本…ですか……………」
「なんか、張り切ってんねー」
「………………」
渡されたのは、分厚い紙の束。
推定、10枚。
1ページ目には、大きく『暴走ヒーロー!~高嶺の花な彼女~』という文字。
出し物の動画の撮影の邪魔をしてしまい、そのお詫びにお手伝いすると言ったのは50分前。
50分でこの紙。2枚目からはセリフがぎっしりかかれているだろう、この苦労の紙。
書いた人はきっと、なんかの映画監督になれるだろう。
主演というところに目をスクロールすると、『ヒロイン倉條美沙さん』との文字。
3年生のクラスの出し物なのに、1年がヒロイン……。
少し問題なような気がするのは、気のせいだろうか。
いや、気のせいではないだろう。
「…俺も出たいかもー」
ぽつり、と呟いた隣のミルクティー。
あたしと代わるか?、と言ってやりたい。
「朝霧くんも出てくれるの?」
謎の人A、……いや小林先輩は、はるるんをキラキラと目を輝かせ見つめる。
あ、これは。
女性客が集まる、という策士の目だ。
「…朝霧くん、出てくれるの‼?」
謎の人Aは、はるるんに食いつく。
謎の人A?小林先輩?
いや、彼はそんな可愛く呼んじゃだめだ。
ガッツきモンスターだ。
これほど、ガッツく人は少ないと思う。
「主役ならいーよーー」
軽く受け流すように、言うはるるん。
主役は、みんなお察しであろう鬼瀬先輩。
迫力あるその顔と演技力は、はるるんには到底出せないものだ。