カバンカバン、…そーいえば、カバン自体持ってきてなかったんだ。
前日に接客・宣伝班は、午前帰りって言ってたから、お金もお弁当も持ってこなかったんだ。
つまり、あたしの持ち物はスマホオンリー。
手帳型のスマホケースにちゃんと定期は入っているので電車の面はご安心を。
「…志貴先輩のクラスに行こっかな…………」
ぽつり、呟いてみた。
「………………」
優季は何も言わない。
もうこの季節だし、時期だし、日にちだし。
優季クンは優しいから何もイワナイ。
もう志貴先輩があたしに惚れるなんて可能性は0と等しい。
なのに、何故。彼らに会いたいのか。
その答えは数学のように単純で明白。
楽しいから。
無意味なことを繰り返すのは、あたしの残念な得意分野である。
無くなったあとの喪失感も慣れっこなのだ。
「……優季、志貴先輩たちに会ってくるよ」
「……あぁ」
ぷいっと、すぐそっぽを向いた彼の表情は分からない。
拗ねてる……?そんなわけがない。
多分、呆れだろう。
「昼ごはんは、勝手にあたしの家で食べてもいいよ。自由にして。帰りの時刻は連絡する」
「分かった」
「うん。ありがと。じゃ、また」
教室から出て、2年の教室を目指す。
はるるん情報によると、今日はお昼からフリーになるらしい。
意外と早くオバケ屋敷の迷路が完成つつあって、今日はお昼からフリーになったらしい。
運が良かったら、一緒に帰れるかもしれないのだ。