「ん、…じゃあ、いただきます」
適当に手を合わせて、箸を進めた。
ぱくり、スパニッシュオムレツを食べると、じゃがいもの美味しい味。
「…えっ、と。何でご飯俺食べてんのー?」
はるるんが戸惑った様子で聞く。
確かにそうだ。
志貴先輩なら絶対断る話だ。
「橋本が食べてけって」
「へぇー。橋本くん、ありがとーねー」
「いえいえ」
優季はあたしには向けない笑みを彼に向けた。
完璧、紳士バージョンだ。
食器の音のみが鳴り響く。
誰も話さない。
けれど、この空気は好き。
誰かとご飯を食べるのが好きだ。
確かに少し気まずいけれど、それは人がいるから感じることであって。
一人じゃないんだなぁって、思う。
お母さん達がいなくても、大丈夫って思う。
そんなことををしみじみと感じていると、食べ終わっていて。
志貴先輩とはるるんは帰る支度をし始める。
そして、すぐに帰っていった。
全然話さなかった。
けれど。
今日。志貴先輩と帰り道会って良かったなぁ。
……………って心底思った。