フルーツタルトなんて何年ぶりだろうか。
ずっと食べたかったんだよね。
そう思いながら一口ぱくり。
さすがフルーツタルト。
ビバ☆フルーツタルト。
すごいよ、フルーツタルト。
「お口の中は、まるで志貴先輩のようです」
「……君ってズレてるよね」
「……………………」
うぐ……。これは否定出来ん。
「んでんで、変態先輩」
「だから朝霧晴だってばー」
「朝霧晴先輩」
「晴でいいよ」
「晴」
「君にハルって呼ばれるのなんか嫌だわ」
じゃあ、なんて呼べばいいんだよ。
素直にあたしが従ってるいいことに調子乗るんじゃないよ変態ヤローめ。
心の中では、もうあんたのあだ名は変態で決まってんだよ。
「じゃあ、はるるん」
「……もうなんでもいいよ。うん」
何で諦めるの。
言い出したのはそっちでしょ。
そう切実に言いたい衝動をぐっと押さえる。
いや、だって先輩だし。変態だし。
なんか理由になってない気が……。
いや、気のせいか。
うん、そうしとこう。
なんて思っていると、
「みさりん」
と血迷ったのか変なことを言い始めた。
「え、何ですかその呼び方。気持ち悪いです」
キモいキモいキモいキモいキモい。
志貴先輩に呼ばれるなら百歩譲って認めるけども、これは何歩譲っても認めれないんですけど。
「はるるんと呼んどいてそれはないでしょー」
変態先輩がくすくすと傷ついた素振りも見せず、彼は注文したミルクティーをかき混ぜる。
髪色もミルクティー。飲み物もミルクティー。
ブブブッ、ウケるー。
「……んで、はるるん。ご用件は何でしょうか?」
「……単刀直入に言うよ」
何この空気の切り替えの早さ。
さすが要注意人物と言うべき所なのだろうか。
飲み込まれるな、あたし。
シリアスムード?
そんなの知るわけない。
相手が一人でやってればいいんだよ。
何で空気を読んで、あたしもシリアスムードにならなければならないものなの?
答えはNOだ。
あたしは彼の茶番に参加するほど、お人好しじゃない。