side.Y



「橋本くん、今日お弁当…………」


「あ、ごめんね。今日もお弁当、用意してあるんだ」


目の前の先輩と思われる人は、悲しげに瞳を揺らした。


俺の手には黒のお弁当。


言うまでもない。美沙が作ってくれたものである。


美沙が母さんに優季の朝ごはんとお弁当作らせてください、と言ったときはビビった。うん。


ついに俺にも春が……っ、というのは冗談で。


急なことでビックリしただけである。


理由は、朝も優季が来てくれるのなら、自分が用意する方が楽だ、というものだった。


確かに、5時くらいにご飯を食べていくのは、結構キツイ。


昼まで腹が持たない。


朝ごはんは何となく理解できたが、何故お弁当も?……もしかして、弁当はいつも女子が作ってきてくれてくるのを忘れてる?


これは少しチャンスだ。

美沙にお弁当を作ってもらうチャンスだ、と。


しかし、あやつは途中で気づきやがった。


ということで、プラン変更。


一斉一代の“押し”に出たのである。


無理矢理、美沙を丸め込め、無事お弁当をゲットしたのである。


まぁそんなことは、さておいて。


「じゃあ、橋本くん。一緒にご飯食べよ?」


この目の前の女子をどうにかしなければ。


弁当は、いつも美沙と食べるか、友達と食べるか。


9割型、美沙だけど。


別に友達がいないわけでもない断じて。


今日はその一割型であるので、相川のところに行かなければならない。


というか誘われた。ここ、大切。