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ブー。


ブザーが鳴り、辺りが暗くなる。


隣の美沙ちゃんは今から始まるというのに、眠たいご様子。


ぱちぱちぱちと踏ん張るように目を頑張って開けていた。


何この生き物。可愛すぎ。


しかも、そんな彼女の着ているのは、自分のカーディガン。


もし寒かったときに着ようと一応な感じでカバンに入れておいたものだ。


くそ。こんなことになるんだったら、一日中そのカーディガン来とけば良かった。


なんて思っても、後の祭り。


後悔、先に立たずってやつだ。


大きな音が鳴り響き、画面ではスーツ姿に頭にはビデオカメラと完全不審者な格好をしたのがキレのいいダンスを披露していた。


となりの美沙ちゃんは、というと。


長い睫毛を伏せて、一定のリズムの吐息をたてていた。


寝るの早。


今から始まると言うのに。


映画デートってさ、映画を見て、ファーストフードの店とかで、感想言い合って話の花開かせるモンじゃなかったっけ?


…まぁそんなこと、したことなかったけど。


うん。俺はどちらかというと、ハローしたら、レッツホテルだったし。


待った?って最初の会話から早30秒で、どこのホテルにする?って会話になってるから。


まぁそんな俺の昔話はさておいて。


映画の本編に入る前から寝てしまった美沙ちゃんとは、王道的な映画館デートは出来ないということになってしまったのだ。


それより、カーディガンカーディガン。


美沙ちゃんがそれを返してくれたあとカーディガンはどうしましょうか。


美沙ちゃんが返してくれた次の日、暑かろうが寒かろうがカーディガンは着用は決定。


ここからが問題だ。


洗濯するか洗濯しないか、だ。


映画の本編開始前の俺の頭の中は、カーディガンのことで頭がいっぱいであった。