「今何時?」


「5時半ー」


「もう帰らなきゃいけない時間じゃん」


やだなぁほんとほんと。


最近、優季クン過保護がバージョンアップしてきたんだよねー。


料理もさせてくれなくなってきたんだよ?


マジで過保護モンスターである。


いつかモンスターペアレンツみたくあたしのストーカーをしてそうで怖い。


「あと30分くらいなら、時間あるからドーナツ食べてかない?」


「ん?美沙ちゃんからの誘いなら断れないじゃーん」


嘘つけぃ。女の子のお誘い、だからでしょ?


それをつっこんだら、


何度目なのそのつっこみ。飽きたよー、


なんて言われそうなんで、ここは黙ってこらえる。


笑いの最先端を走る女、倉條美沙。


言うつっこみは、最先端なものでなければいけないのだ。


「……え、ちょ、はるるん待ってっ」


いつの間にか、はるるんは数メートル先まで移動していて、あたしは頭を切り換え、彼のもとに駆け寄る。


ドーナツ屋さんで何を食べようか。


ポン・○・リングに、エン○ルクリーム。オール○ファション。


浮かぶ浮かぶドーナツの名前。


「ちょっとー、今何妄想したのー?すんごい顔ゆるゆるだったよー」


「ん?いや、なにも?」


今日があたしのちょっとした期限だから。


もうこれからその禁止令が解かれることはないのだから。


今日だけ。


「ドーナツ、5個食べよっかなー」


「デブーまっしぐらー。ポーク美沙ちゃん的なー?」


「煩いよはるるん」


それに意味不明だよソレ。


「急ごっ、5個食べる時間が少なすぎるっ」


「え、マジで食べる気だったわけー?俺、面倒だから歩いていきたーい」


「はるるんの事情など知らんっ!さぁ行くぞネバーランドへッ」


「大声で変なこと、叫ばないでちょーだいよ。周りの奥さんからの視線が痛いんだけどー」


はるるんの腕をつかんで、駅までの道のりを早歩き。


オレンジ色の世界。


あと何回、彼らと見れるのだろうか。


そう思ってしまうあたしは、少し可笑しいのかもしれない。