「志貴ー」
変態先輩が志貴先輩に助けを乞う。
ふふふ。
バカだね、変態先輩。
志貴先輩はクールな上、ドライ。
助けなんて出してくれるわけ───
「おい、コイツと茶したら、明日は昼飯一緒に食ってやる」
───だだだだだだ出しただと……っ‼??
「お主は何者じゃっ‼」
あたしはビシッと変態先輩を指差す。
「朝霧晴だよーん」
「あさぎり、はる……?」
なんだっけ。
なんか聞いたことがある単語。
思い出せ、思い出すんだ。
ぐるぐるぐるぐる、頭を回転させる。
ふと脳裏によぎったのは、綺麗なソプラノ声だった。
───『朝霧晴。彼は志貴くんの親友なの。プレイボーイだし、この人勘がいいのよ。ばれないように要注意よ』
あ、そうだ。
朝霧晴。
あたしの約束を実行する上で最も警戒すべき人間。
彼を警戒しなくては、いけないことは分かった。
朝霧晴とお茶なんてしたら、バレてしまうかもしれないという危険があることが分かった。
けど、先輩とのランチ券とアブナイお茶会。
天秤にかけたらどっちに傾くと思う?
勿論の如く、
ランチ券>お茶会、である。
「先輩先輩、今の会話忘れないでくださいね?」
「あぁ」
ランチ券のゲット決定だ。
「さて、変態先輩。お茶をしましょうか」
ニヤリ、あたしは彼に笑みを向ける。
要注意人物?危険をおかす?
勿論、承知である。
けれども。
あたしの胸にあるのは絶対的な自信。
あたしの秘密がバレないという、絶対的な自信である。