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「………………」
え、何この展開。ヘルプミー。
拐われる宇宙人の気持ちが理解できてきたとき、彼は立ち止まる。
ただをこねるあたしを連行するように引きずり始めて数分。
やっと、目的地に着いたようだ。
「………え、いがかん…?」
何故に映画館。シアター?
意外に普通すぎて怖いんですけど!恐ろしやっ。
「悪・霊・退・散!……いだッ」
「急に叫ばないでくれるー?」
「足踏んづけるよ‼?あたしの足踏み痛いよ‼?いいの‼?」
「もう痛いから。周りの視線がもう足にも突き刺さってて痛いから」
「意味不明過ぎて困るんですけどー」
「その頭に意味不明とか……………うっ泣けてくる…」
目頭を押さえ始めたはるるん。
なんなのこの人。
「ちなみに言うけど、泣き脅しは志貴先輩の涙以外は受け付けません。あ、それと可愛い子のみね」
「優しさが一ミリも感じられない」
「優しさなんて、求めるだけ無駄だよ」
彼は、はぁとため息をつき、すぐさま独り言にチェンジ。
なんで…きに………の……で好………なっ…の、。
ブツブツブツブツ。
ほんと残念イケメンだなオイ。
「はるるん」
「何ー?美沙ちゃん」
「映画見るの見ないのハッキリして」
「見る」
「うん、じゃあ、見てきてね」
「美沙ちゃんも強制参加に決まってんじゃーん」
「………………」
「では、レッツゴー映画館」
ぐいぐいと引っ張られる腕。
この魔の手から逃れる方法は、…………
まぁでも。
はるるんだし、あのはるるんだから。
楽しいに決まっている。
行ってやろうじゃん映画館。
あたしは彼の腕を振り払うことなく、素直に着いていった。