今、あたしがしなくてはいけないこと。
それは、スプーンを取って笑顔で、
「うん」
彼の言葉に肯定するだけ。
いつも通りいつも通りに、接するんだ。
「てゆーか、優季。地味に間接キス狙った~?」
ニヤリニヤリ、意地のの悪い笑みを浮かべると、優季はカッと顔を赤くする。
何この子。告白前の乙女かよ。
「間接キスなんかで、顔赤くするなんてピュアー」
あたしは左手のスプーンでハヤシライスを作る。
やり返しだコノヤロー。
「………んぶっ」
もちろんの如く、あた優季の口にスプーンを入れ返した。
「これで、おあいこねー」
パクリ。右手の自分のスプーンでハヤシライスをすくい口に運ぶ。
「…ご馳走さま」
それは最後の一口だった。
「お皿は洗っておくから、桶に入れといて」
「分かってる。つーか、どっか行くのか?」
「まぁね。食パン切れてたから、買ってくるのー」
「俺に言えば買ってきたのに」
「忘れてたの。ご飯食べたら、帰って良いよ。最近落ち着いてきてるし」
「…いや、10時までいる。課題しとく」
「あっそ。じゃあ、鍵閉めといて。あたし、鍵持ってかないから」
「ん」
よくよく考えたら、この会話夫婦みたいじゃね?仲睦まじい感じの。
まぁそんなことはどうでもいいや。
あたしは、マイバックと財布とケイタイを持って、少し暗い外の世界に身を投げ出した。
夏の終わり。少し熱く、秋の香が時々香る、何かが始まるそんな時期である。