「お兄ちゃんは優季だよ」
「頭大丈夫か?」
え、何その冷たい反応。
「妹としてはそれは悲しい」
「……………は?」
その間を置いてからの、は?って傷つく。
それ言うなら、最初から即答で、は?って言って欲しいのはあたしだけでしょうか。
「優季はカナちゃんにお兄ちゃんポジション取られるのが嫌なんでしょ‼?」
だから懐柔されていることが気になるんだよ。
うん。さすがあたし。察しが良い。
「………………」
うん。ごめん。全然違ったんだね。
だから、冷めた目であたしを見ないで。
「…俺は、」
「俺は、何?」
彼の言葉をリピートして、答えを急かす。
だけど、その続きは何時まで経っても流れてこなくて、優季は口を悔しそうに噛み締めていただけだった。
「…ゆ、うき…………?」
そんなに強く噛んじゃ、唇から血が出てくるよ。
左手を彼の唇まで腕を伸ばす。
触れると少し温かい彼の唇。
人の暖かさを感じる唇の持ち主の表情は悔しそうで、ひどく悲しそうだ。
「優季。噛んじゃ、だめ」
指先の少しを唇の中に人差し指を入れて、強行突破を測る。
さっきまで食べていたハヤシライスがあまり彼の口の中に入っていないことを望んでおこう。
「……あ」
水を打ったように、ハッとした彼はすぐさま口を開けた。
「……あっぶな」
思いっきり口の中に手突っ込みそうになったよ。急に開けんなやコノヤロー。
「優季クン。君は何を思っていたのかね?」
さっき何と思っていた?カナちゃんといるとき優季は何を思っていた?
「…………何でもない」
「…………………」
あたしじゃ、ダメってこと?
なんだよソレ。
あたしばっかり理解者幼馴染みお兄ちゃんな存在って思ってて、優季はあたしのこと何て思ってるの?
もしかして、あたしだけが大切と思ってて、優季はイラナイと思っているの?
あぁそっか。邪魔だったんだあたし。
優季は優しすぎるから、あたしに邪魔って言えなかったんだ。