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ぴしゃり、と保健室の戸が閉まった。


あたしは降っていた手を下ろし、片手のティーカップを置いた。


「…………これで満足?御幸センセ」


「切り替えはえーな」


目の前の男は好奇の目であたしを見る。


「……約束守ってくれるんでしょーね。カナちゃん、なんてあたしに言わせたんだから」


「分かってるに決まってんだろ」


彼はティーカップに口のもとに持っていく。


つーか、と彼は言いながら、ティーカップを唇につける。


「倉條がそこまで何でする必要があるのか?」


「あたしだから、必要でしょう?」


意味不明、彼はそう言い、飲み物を飲んだ。


「優季は大切だから」


「………………」


「優季は優しいから、最後まであたしに着いてきてくれると思う。だから、せめてと思った」


「………………」


「優季は分かっているから、多分今気付いてなくても、気付いちゃうだろうからそして、またあたしに気を使う。もう嫌なの。最後ぐらい格好つけたいの」


「……………ふーん」


「反応薄」


「他人事だから当然だろ」


「……………体育祭の日に詳しく伝えるから」


「おう」


「……………優季が言ってからかなり時間経ってるし、もう行く。じゃあね御幸センセ」


「いつでも遊びに来いよ倉條」


彼はニヒルに口角を上げた。


「うん、気が向いたらね」


……多分、そんな気の迷いみたいな感情は起こらないけど。


ぴしゃり、扉を閉めたのであった。





バカな奴ら。

保健室に一人いた男が、そう呟いたのも知らずに。