保健室は3年のみが使っている北校舎に行かなくてはならないわけで、とても距離が遠い。
走るわけにもいかなくて、早歩き。
こんな時間に出歩く生徒は体調不良が理由しかない。そんな生徒がダッシュなんてしてたら、嘘がばれてしまう。
走れないのが、もどかしい。
2年の教室を通るとき、ふと目に入ったクラス。
その教室には異質のミルクティー色。
あれが美沙のいうはるるんというヤツだ。
朝霧晴。美沙に家族関係の仲違いを直してもらったらしいヤツ。
美沙に家族の話をさせたヤツ。
本気で気に食わない。
だって、アイツに家族の話をさせたのだから、泣かせたのと同類。
その男の隣の席の艶のある黒髪。
その耳にはキラリと光る桜の花びらのピアス。
あれが美沙の言う志貴先輩。
槻倉志貴先輩だろう。
まぁ美沙が好き好き言っているのは気に食わないが、それ以外は感謝しているようなしていないような。
槻倉志貴先輩がいるお陰で、今のアイツがいるというわけで。
「…………………」
それより、今は美沙とあのバカ教師の方が肝心だ。
急がなくては。
その教室を背にまた走り出す。
その時、ミルクティー色のアイツと。
目があってしまったような、しなかったような。
そんな感じがした。