いつも、きゃーきゃーイケメンイケメンと叫ぶ女の子達は今は体育祭の話にのめり込んでいる。
北府高校のモットーは何事にも熱心に。
先生の教えが上手いのか、その教えを行う生徒達。
素直なのか、頭が良いゆえに違うところに鈍いのか…。はてまた、それは謎である。
「どーしたの?センセ」
直々に来てくれるなんて、美沙ちゃん嬉しいんだけど。
「いやー、ちょっとなー。ちょいと、面貸せや。保健室でお茶会としよーや」
保健室でお茶会。
そんなことをするようなティーセットが保健室にあることが驚きだ。
「優季からバカと二人っきりになるな、と言われてるんですけど」
「バカ?俺のことか?」
それ以外に誰がいる。そんな視線を彼に送ると、彼は優季を睨みだす。
きっと彼ははるるんに続く残念イケメンという部類の人であろう。
「まぁまぁセンセ?お茶会ってことはお菓子あるんでしょ?しょうがないからお菓子に免じてお茶会とやらに参加してあげる」
にこり、と笑うと、彼はハッと鼻で笑う。
つくづく気に食わない男だ。
席を立つと、話にのめり込んでいた人達の視線があたしの方に向く。
優季はギョッと変なものを見たような目で先生を見て、女の子は途端に騒ぎ出す。
体育祭委員の隣で、話の行方を見守っていた先生の方を向いて、あたしは一言。
「保健関係の書類で、少し記入漏れがあったようなので、少し席外します」
「わかった。行ってこい」
「ありがとうございます。…さて、御幸センセ。行きましょっか」
これからのことをじっくり話そうじゃないか。