げ。もう時間ないじゃん。


「送ってやろうか?」


最近、志貴先輩が異様に優しい。


いつ嵐になるか怖い限りである。


「花火はまだあるから、いいですよ。楽しんでってください」


ほんと、まだまだなのに。


お祭りはまだまだなのに。


最後までまだまだなのに。


どうして、あたしはこんなにも時間がないのだろうか。


今日においても、いつにおいても。


限られた時間だとか、よく分からない。


それが長いのか短いのかも分からない。


「あ、写真とか送ってくれると嬉しいな」


「志貴のー?やだやだコレクションにする気ー?」


「違うに決まってんでしょ」


だれが、コレクションにするか。


「あたしはアルバム派だよ」


「変態には変わりはないじゃーん」


「はるるんに変態って言われたくないし」


「お前も十分変態だ」


「はいっ!志貴先輩が言うなら、その通りです!」


「あり得ないわー」


知るかよそんなん。


あたしの中じゃ、志貴先輩が絶対判断だし。


いや、でも。待って。


変態と認めてしまった=はるるんと同類。


はるるん=親友。


はるるん=変態=美沙ちゃん。


よって、親友=美沙ちゃん。



「うへへへへ、志貴先輩と親友だぁ~」



「どうしてそうなった」


「いや~、照れなくても大丈夫ですよ~」


「話が通じねぇ」


「美沙ちゃんと話をするときは、未確認生物と話すと思って、やった方がいいよーん」


「表に出やがれコノヤロー」


黙っていれば、言いたい放題言いやがって。


未確認生物だ?そりゃはるるんの下半身だぞコノヤロー。


「いつの時代のチンピラさー」


「平成だしっ!てゆーか、もう時間だしっ!志貴先輩とラブラブトーク出来なかったし!はるるんのせいだしっ」


「人のせいにしないでちょーだいー」


「お前とラブラブトークする約束もしてねぇよ」


ワオつっこまれた。


くそ。美沙ちゃん、完璧ボケボケポジションじゃん………っ。


「くっ………負けるつもりはないからね!じゃあ、新学期!」


意味不明ー、と大ブーイングを背に、あたしは帰路に着いたのである。


志貴先輩が最近優しい。


いつか嵐になるに違いない。


家に帰ったら、てるてる坊主を作って、嵐予防をしよう。


世界の皆が嵐に困らないように。


そう思っているあたしは優しさの塊である。