「キミが倉條美沙チャン?」
彼がニッコリと笑ってあたしに問う。
ミルクティーな髪に少したれ目。肌はキメ細かくて、甘い顔立ち。
雰囲気も甘くて甘くて。甘すぎて、ゲロっちゃうような雰囲気だ。
要約すると、彼はイケメンという部類の人。
イケメンスマイルでうっとりヒャッホー状態である。
…なんて、あたしがいくわけがないけど。
「はい、そうです」
冷静に冷静に質問の答えを弾き出す。
まじまじとあたしの顔を見て、彼はふわりとまた笑った。
さくらさんとは、違った何処か裏があるような気に食わない笑顔で、無意識に眉間にシワが寄った。
「なんとなく、後輩が高嶺の花って言っていた意味が分かったよーん」
「高嶺の、花………………?」
いやいや。ちょっと待ってお兄さん。
あたし倉條さんですけど。美沙ちゃんなんですけど。
高嶺でも花って名前でもないんですけど。
え。名前知られてないの?クラスの子にも浸透してないの?
やば、泣けてくる。
鼻の辺りがツーンとしたところで、あたしはミルクティー色の彼を見る。
その彼はまだ笑顔を浮かべていた。
「えーこの子自信があって志貴に近づいたんじゃないんだー。いっがーい」
「……どういう意味ですか?それ」
なんなんだ。この人は。
言葉1つ1つに刺があって、容赦なくあたしに刺そうとしている。
まるで、あたしのことが嫌いみたいじゃないか。
「ねーちょいちょい。俺とお茶しない?」
え。
「あたし、貴方に興味ありません」
そもそもあたしは志貴先輩とランチを食べたくて、ここに来たわけだし。