もう秘密がないことを願っているけど。
ただそれは願いたいだけであって。
志貴も何となく察しているだろう。
彼女には、もっと大きな秘密がある。
秘密に埋もれすぎて、彼女の本当の姿が分からない。
藤崎さくらに関してもそうだ。
藤崎さくらと知り合いと認めたが、本当に知り合いだけだったのか?
本当にただの知り合いなのか?
分からない。何が本当でどれが真実で、どの顔の彼女が本物で。
まるで霞(かすみ)。
朧気で曖昧で、手を伸ばすとそれは必ず空を切る。
けど、そんな霞な彼女だけど。
好きになってしまった。
正体もなにも、分からないのに好きになってしまった。
得体も知れないそんな彼女を。
なら、。
知ればいい。
ゆっくりゆっくり、じっくりと。
周りを囲み込むように、霞を手で掴むのでなく、包む込め。
朧気ならそれでいいじゃないか。
それを捕まえるのでなく、囲めばいい。
俺は随分と甘くなったようだ。
彼女に会う前なら、掴んでやろうと必死だっただろう。
けど、まず最初に。
ゆっくりゆっくり、じっくりと。
彼女の秘密を暴く鍵を探そうじゃないか。
霞の中の秘密の鍵。
そう簡単には見つかるものではないけど。
「そうするしか手段がないのが心苦しいんだよねー」
手段がそれしかないなら、仕方ない。
彼女を脅すという手段もあるけど、それは絶対したくない。
ほんと、彼女と出会って。
バカみたいに甘くなってしまったものだ。