side.H
カランコロン、カランコロン。
と下駄を鳴らしながら歩いていた彼女を思い出す。
トイレから出たら、思った通り彼女はいなかった。
ということは、自分が彼女が目を輝かせていた焼きトウモロコシを売っていた屋台に行かなきゃ行けないわけで。
「…好きな子に会うためなら、手間だと思わないところが恋愛マジックだわー」
少しばかり青春というカテゴリーに分類されるであろう初恋をどことなく感じていた。
最近はずっと居すぎて慣れてしまったが、あの子見た目、目立ってるんだった。
自分のことを醜いなんていう彼女。
彼女の家族の話を聞いたとき。直感的に思った。
醜いと言ったのは間違えなく母親だろう、と。
危うい、と彼女を見て感じたことがある。
それは、家族の話を話していたときとか、その日の帰り道とか、…言い出したらキリが無いほど。
もしも、の話で。
もしもと言ってしまうのには、少しばかり語弊がある。
語弊どころじゃない。大きな誤りだ。
冷静に考えたら、“もしも”でなく“確実に”の方が正しい。
もしも、と言ってしまうのは、ただ認めたくないだけで。
そんな自分勝手な理由が後ろ髪を引っ張っているのだけども。
もしも、の話。
彼女には、秘密がたくさんあったとして。
1つ目は特待生であること。
これは学園側も秘密にしておいて欲しいだろうから、仕方ない。
なぜなら、特待生の頭脳に嫉妬していじめが発生、なんて北府高校の名に傷が付くから。
2つ目は家族の話。
本人はどうでもいいような、感じだったが…というと間違いな気がする。
本人はふっきれたような感じだった。
まぁそんなことはどうであれ、あまり話したいものでは無かっただろう。
たった2つの秘密。
ただ2つだけを知っているだけ。