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「さて、家を出たのはいいのですが、…何処に行くのは何となく分かった。しかし、何を買うんですか?」
「………………」
そんな鋭い軽蔑の目で見ないで。
恥ずかしー。
「…まず、浴衣だろ。帯だろ。あと、髪飾りと、カバンだろ、帯紐とか、…帯留めもするか?…あ、中に着る白い奴いるか?」
「引くんですけど」
何この子。
女の子の浴衣知り尽くしているんですけど。
怖いんですけど。
「もしかして、そういうご趣味で?…」
恐る恐る聞いてみると、
「んなわけないだろ」
とチョップ付きの返事をすぐにプレゼントしてくれた。
チョップが意外と痛かった……。
美沙ちゃんハートに謎の火がつく。
「照れんなって」
彼の肩に馴れ馴れしく手を置いてやった。
フッ。なんか優越感。
「……………いだっ!ぁああぁあああ‼あたしが悪かっ…いだいいだいっ…ごめんってーっ」
まさかのぐりぐり。
その痛さはまるで志貴先輩に無視られる時と同じ。
あたしは優季をいじくってやろうと思ったことを深く後悔した。
ぐりぐりから解放されたあたしは、とにかく痛いとしか言いようがない頭痛に見舞われる。
くっ…………優季侮りがたし。
我がライバルには相応しい。
「あ、でもテストはあたしの圧勝で相手になんないね…いたっ」
何で叩くの!今日、何回叩いてると思ってんの!?
「知ってた!?1回頭叩くごとに、脳細胞600万個死ぬんだよ!?」
このあたしの天才的な脳に何してくれてんだよ!コロヤロー。
「それ、迷信」
「え、マジで?」
「マジで」
「……………………」
優季の方を見ると、彼はニヤリと口角を上げていた。
嫌な予感がした。
「なら、お前の頭は叩き放題だな」
「………………」
倉條美沙。今、初めて木魚宣言されました。
ん?木魚?少し違うかも。
どちらかというと。
「もぐら叩きのもぐらになりたい………」